徒然なるままに

2015年9月6日

UERLabo開設記念2+文科省教育課程企画特別部会の論点整理応援編1「アーカイブ:分担執筆、論考、エッセイ」案内

 文科省による学習指導要領改訂への動きが明確になってきました。特に「教育課程企画特別部会」による論点整理を興味深くよみました。かつて90年代の「新しい学力観」華やかりし頃に、教育ジャーナリズムで私見を提示する機会を与えられた者として、ようやく文科省は本来の位置から語ることが可能になったと思ったからです。

理由は、学習主体の子どもたちが担うべき(ざるをえない)近未来の日本社会の課題から教育課程の新たな方向を提示することに挑んでいるからです。

 「新しい学力観」の問題点は学力低下ではなく、名称に反して新しい学力を提示できなかったことと判断しています。来るべき社会を担う子どもたちに必要な学力が過去の延長にないことを指摘することに急で、肝心の新たな社会を創造するための知識、技能、感情表現、コミュニケーション様式、行動規範、価値の序列などの具体像を提示できなかった、と私は自戒をこめて指摘せざるをえません。

 加えて、00年代に入ってからの「確かな学力」というコンセプトのもとで展開された学力論にも疑問をもってきました。どのような言葉で飾ろうとも、学校現場に、「教師」「教科書」「教室」「時間割り」という日本の公教育制度が100年以上の時間を費やして制度化した世界を、だれもが経験したことのない新たな時空の誕生に応じて進めようとしたシステム転換の作業を止める役割をはたした、と私はみなしています。

 それに対して、本年1月からほぼ月2回のペースで進められ8月20日の会議に提示された「論点整理(案)」がまとめられるまでの加筆修正過程の内容から、未来の課題の把握に挑み、その克服と新たな社会の創造を担う子どもたちに必要な学力と学習方法の施策化に挑む覇気を読み取りたくなりました。55年体制下での1958年改訂で整った学習指導要領を基盤とする教育システムが、80年代半ばの臨教審を経て、新たな時代の到来に備えるために提示され、「新しい学力観」という流行語を生んだ1989年改訂へと進んだものの、冷戦終焉後の急速なI T化と一体化した大競争時代に挑む準備がなく、学力低下批判に応じた「確かな学力」の提示にいたるが、その問題点?をふまえて、いよいよ新々学力観が提示される、との思いをもちました。

 もっとも、現時点では「論点整理」にとどまり、今後、学習指導要領改訂の設計図となる教育課程の検討に入るようです。この作業について、かつて、89年改訂とともに誕生した生活科の学校現場における実践化とその後の新しい学力観の理論化に参加した研究者の一人として、少し心配な面があります。小中高別と教科・道徳・特別活動・総合的学習の時間という、いずれも既存の学校種と教科構造を前提に検討されるようだからです。

 いずれの世界にもあることですが、総論賛成各論反対という観点からの改編を拒む作業が進行する可能性を危惧しています。しかし希望はあります。「教育課程企画特別部会」の委員の先生方の中に、90年代に実践化と理論化の作業の場を共にした方々がおられます。その後の改訂も含めて、学校現場の先生方と労苦をともにされてきた先生方です。さらに、何よりも心強いのは、UER-Laboの顧問である池野先生も委員の一人であることです。

 その意味で、私もUER-Laboの主催者として、微力ではありますが、応援の意を込めて、今後のスケジュールにそっての検討過程を調査研究の対象にしたプロジェクトを設け、「調査研究の部屋」で報告していきます。

  さらに、現時点でできる私的な応援者の立場から、少しでも役立てばとの思いで、UER-Laboの「アーカイブ」にストックした拙稿の案内をしておきます。その多くが90年代に生活科誕生とともに参加した教育ジャーナリズムに書き続けた拙稿のPDF版です。新教科生活科の実践化をスタートに、「新しい学力観」をメインコンセプトにした学校づくりの盛衰の報告から、学校の内と外の課題を超えて、少子高齢・人口減少の進行に伴う教育システム転換への問題提起へと展開する00年代に入ってのからの論議まで収めてあります。

 上述したように、「論点整理」はいまなお発展途上と見受けられます。もしかしたら「贔屓の引き倒し」のような繰り言になるかもしれませんが・・・・教育言論界から離れて少子高齢・人口減少の現場を歩いてきた一人の研究者の記録を提供する作業として、「アーカイブ」を位置付けていただけることを願います。

 その1回目の案内として、「アーカイブ」の「分担執筆」に25種、「論考」に88種、「エッセイ」に106種の拙稿のPDF版をストックしましたのでお知らせします。

 「分担執筆」「論考」「エッセイ」の三項目それぞれにストックしたPDFのタイトル等と活用の手引きを記した一覧表を次の名称で作成し、各項目の冒頭に入力しました。この場でもドラッグ&クリックでダウンロードできますので試みてください。

  「分担執筆」:◇アーカイブ 著書:分担執筆タイト1~25

  「論  考」:◇「論考」タイトル一覧表 1~88

  「エッセイ」:◇「エッセイ」タイトル一覧表1~106

〇「アーカイブ」では、それぞれのPDF版を発表年月順に入力しますので、発表年月の新しいものから年月をさかのぼる順序でストックされています。そのため、一覧表の左端の番号は入力の順序を示します。今後、新たな分担執筆を入力するたびに加算された番号が付記されます。また、タイトルの前の数字は発表年月を示します。

〇ストックされたPDF版をご利用される場合は、一覧表からタイトルを選び、その発表年月を辿ってPDF版をダウンロードしてください。

〇特に「分担執筆」には、単行本に収められた論考という特性から、一覧表の25種のタイトルの欄の最後に記したページ数が示すように、10ページ前後の分担から百ページ以上の著作に相当する論まで含まれています。その意味の拙稿を窓口に、他の著者の分担内容や関連する著書への関心が高まることを願っております。

〇また「論考」には、一覧表の88種のタイトルの欄の最後に記したページ数が示すように、数ページから数十ページまでの大小様々な論がストックされています。この88種の拙稿を分類することから生まれたのが、「調査研究の部屋」を構成する「5領域18項目の調査研究テーマ」です。その意味で、18種のテーマを手掛かりに、興味関心に応じてご笑覧下さい。

〇「エッセイ」には、他の項目と異なり、一覧表の160種のタイトルの欄の最後に記したページ数が示すように、数ページの論から半ページ以下の提言まで含まれています。まさに徒然なるままに記録したエッセイです。領域をとわず、気分転換のつもりで眺めていただけることを願っています。

 

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